早速一時間目の授業が始まった。
今後の活動予定とかのためのホームルームなのであるが、実際は学級委員を決めたり席を気寝たりする時間である。
「先生はそういう事がよくわかんないから適当に決めてくださいね、アハハ〜♪」
なんとも頼りない先生である。
そのまま職員室に行ってしまった。
仕方がないので、クラスのみんなだけで各役割を決めて行く。
「え、私また学級委員??」
美也は、優秀な上に人付き合いも上手い。
確かに地味な女の子ではあるが、みんなに好感を持たれている女の子なのである。
学級委員に推薦したのはサルサ。
自分は、そういう事をやりたがらないくせに人におしつけようとするくせがある。
結局、女子の学級委員は美也に決まった。
「私、できるかしら… あんまりそういう経験ないし…」
しかし、美也が言ったことは嘘である。
美也は、今までに数え切れないほどの役員をやってきているのである。
中学の時は生徒会副会長まで勤めた事のある、いわば生徒会のアイドル的存在なのだ。
「美也ちゃんは、また学級委員か… さすが、元生徒会のアイドル!」
タケトは、美也の事を美也ちゃんと呼ぶ。
二人は幼なじみなのに、タケト君、美也ちゃんと呼び合ってる妙な関係なのだ。
「さすがに俺が推薦するやつはみんな役員に決まるな♪ 美也! 学級委員がんばれよ!」
「何言ってるのよ〜 自分で言っておいて… サルサ君なんか…」
普通だったら、『バカー』とか何か言いそうなものであるが、美也はそんな事は言わない女の子。
そこが、美也のいいところでもあるんだ。
「しかし、男子も女子もこうすいすい学級委員が決まってくれると楽だな♪」
「とりあえず、明日からノートは見せませんから… ちゃんと宿題やってきてね♪」
女の子は怖いものである。
美也のサルサに対する報復が始まっている。
「み、美也〜。 それは困るのだ。 許してくれなのだ!」
「じゃあ、今度の試合でホームランね♪」
「サルサ、それにプラスして超ファインプレーをするのよ!」
横からミレイも割り込んできた。
しかし、ミレイは相変わらずむっちゃくちゃな事を言う。
ファインプレーなんて、ボールが飛んでこなければできないのである。
「わかったのだ、しかしなんで、ミレイにまで従わなければならないのだ??
ミレイのノートなぞ見たくもないぞ。 お前のノートは間違いだらけだからな!」
「なんですって、サルサ。 いいこと! 私が見せないと言えばご主人様はノート見せないの!
だから、私を怒らすと言う事は、ご主人様を怒らすと言う事なの!! いい? わかった??」
「ミレイ、いいかげんその”ご主人様”ってのやめない?」
ミレイは美也の事をご主人様と呼ぶ。
美也とミレイは、小学校四年生のときに知り合っているがミレイその時に大ブレークしたテレビドラマ
『小学生メイドは見た!!』のメイドを雇っていた家のお嬢様主人に美也がそっくりだと言う。
ちなみに、このドラマは設定としてはお嬢様主人と主役のメイドがいろいろな難事件を解決
していくという、サスペンスドラマである。
そのドラマの影響から、自己主張の強いミレイは当然ドラマの小学生メイドになりきり
美也は、お嬢様にそっくりなのでお嬢様として二人でドラマごっこで遊んでいたのだ。
そこから、ミレイはいつも美也の事を主人公の口癖である『ご主人様』と呼ぶようになったのだ。
なにせ、ミレイは美也の名前を呼ぶ事よりご主人様と呼んだほうが先なのである。
美也も、もうさすがに二人でいるときは『ご主人様』と呼ばれるのにも慣れたが
クラスの中で呼ばれるとさすがに困ってしまう。
美也は、前々からミレイのこの呼び方を変えさせたかったのである。
「だってご主人様はご主人様だも〜ん♪」
どうやら、ミレイはまだしばらく美也の事を『ご主人様』と呼びつづけるらしい。
美也もやれやれと言った表情である。
「アハハ〜、クラス委員決まったかな〜」
一時限もあと5分になろうかというところに烏丸先生も帰ってきた。
「よしよし、大体決まったようだな。 それでは、出席を取る…」
なんとこの先生、最初に出席を取り忘れていたようである。
まあ一番始めの授業だからしかたがないといえばしかたがないが…
先生も、今日初めて教室に入ったわけだし…
『キーンコーンカーンコーン』
「おや、ベルのようですね。 じゃあ、とりあえず全員出席でよろしいでしょう。 アハハ〜♪」
なんともいいかげんな先生である。
「明日からは、ちゃんと出席取るから覚悟しましょうね♪」
タケトたちには痛い一言である…
<3限>
烏丸先生の生物の授業である。
基本的に、授業は白衣で行うらしい。
烏丸先生と白衣は、なんかお似合いであった。
さすが学生時代から、白衣は着なれたものである。
「僕の自己紹介をします。 名前は烏丸 カオル 年は25歳…」
「先生、ここは二年三組ですよ…」
烏丸は急いでめがねを取りだし、あたりを見まわす。
そして教室の外にでてって、クラスを確かめる。
「アハハ〜、ここは二年三組でしたね。 じゃあ、自己紹介は要らないですね。 さっそく授業しますか♪」
誰だか知らないが、余計な事を言ったものである。 しかし、サルサの臨機応変ぶりが発揮される事になる。
「先生、恋人はいないんですか〜??」
お約束の質問である。
25歳の先生なら、男でも女でも質問されてしまう。
「いますよ〜、何人も。 アハハ〜 友達ならね♪」
「違いますよ、恋人ですよ! こ・い・び・と!」
「いえ、特定の恋人はいません。女性はすべて友達ですから! アハハ〜♪」
「え、先生って何人も付き合ってる人いるんですか?」
ミレイが好奇心いっぱい、しかし『こいつ許せない!』って言う表情で聞き返す。
「いえいえ、友達なだけであって付き合ってる人はいないですよ、アハハ〜♪」
どうやらこの先生、アハハ〜をつけるのがクセのようである。
その後も色々先生に質問は続き、「城西理科大学 理学部生物学科卒」
去年は一般の企業に勤めていたが、去年教員採用試験を受け今年、新任教師としてこの学校にやってきた事がわかった。
そんなこんなで、生物の授業どころではなくなってしまった…
「それでは授業を終わります」
終業のベルとともに先生は逃げるようにして職員室に戻っていった。
しかし、そんな先生にも一つ謎が残った…
「みんな! ぎんせいってなんだろうな??」
タケトは、みんなにぎんせいについて聞いてみた。
そう、先生はさっきの時間のときしきりに『ぎんせい』という単語を口にしていた。
「先生の好きな人だったりして、だってしきりにぎんせいはかわいいしとか言っていて、顔赤らめてじゃない♪」
「でも、ぎんせいなんて名前の女の人?? なんか珍しいわね。」
「じゃあ、みんなでぎんせいについて謎を解かない?? なんか、面白そう。」
「そんな、面白そうって… 先生の秘密を探るなんて…」
美也は、ミレイが暴走しそうになっていたのであわててとめたが、美也もこういう話は好きなようである。
「あ、あたしダメなのよ、今日は部活。」
「俺もなのだ、昨日サボったら、先生に見つかって怒られたのだ。」
いいだしっぺのミレイ、そしてのりやすいサルサこの二人が来れないようである。
そういうわけで、この『ぎんせい』探し企画はボツになると思われた。
「タケト、お前が美也と一緒に今日この件を調べておくのだ。 そして、報告するのだ。」
「そうそう、私たちは部活で忙しいから烏丸の調査はご主人様たちにお願いするわ♪
タケト! ご主人様をよろしくね!」
そう二人がつげるとタケトたちが困惑してるあいだに川江高校の学生食堂「ルナ」へ行ってしまった。
「もう、あの二人ったら! 勝手に決めちゃって! そんな事できるわけないわよね。」
「でも、サルサとミレイのたのみだから… 聞いてあげてもいいんじゃないの…
二人で行こうよ、烏丸先生の調査」
「で、でも〜」
「今のうちにサルサたちに貸しを作っておこうよ。 いつか役にたつかもよ。
それとも今日都合悪い?」
「そんな事はないけど… まあ、タケト君がそういうなら付き合うわ。」
結局二人とも、『ぎんせい』という言葉がかなり気になっていたようである。
放課後、美也とタケトは烏丸先生の後を追う事にした。